継続力をつけるには

子供の頃、親戚の家に行く度必ず言われた事がある。
「大きくなったねぇ」だ。
しかしこう言われる度に首を傾げていたものだ。
そんな事を言うのは、なかなか会えない物理的に遠い親戚だけだ。
自分の周囲の人間で、大きくなったねと言う人間は一人として居ない。
確かに大きくなっているのだろうが、大きくなった自覚は全然無い。
何故会うたびにこんな事を言ってくるのか不思議であった。
周囲の評価と自分の評価が一致していない。
この一致していない評価を「お世辞」と感じる訳であるが、
子供にながらにお世辞を言われた時の不快感を感じていた。
馬鹿な子程可愛いというから、さぞかし可愛くない子供であったろう。

自分で大きくなったと実感する瞬間は、ある日突然やってくる。
今まで届かなかった鉄棒にジャンプしなくても届く事に気付いた日。
食器棚の一番上を開けれる様になった日。
身長130センチ以下は乗れないと断られた遊園地のアトラクションに乗れる様になった日。

背が大きくなった事に気付くのは一瞬だが、一瞬で背が伸びた訳ではない。
瞬間瞬間にジワジワと伸び続けている。
1年で10センチ伸びたというのであれば、1日で0.27ミリの伸びている。
1時間で0.01ミリ。1秒で0.000003ミリ伸びている。
理屈の上では、子供からちょっと目を離した隙に、もはや1秒前に見た姿とは別の姿になっている。
しかし変化が僅か過ぎて気付かないし気付けない。
変化に気付くには、劇的なビフォーアフターが必要だ。
ちょっと目を離した隙に50センチ位伸びていたら、誰だって変化に気付く。
遠くの親戚が身長の伸びに気付けるのは「目を離していた隙に」大きくなったからだ。
毎日見続けている自分や家族では、成長に気付けない。
ビフォーアフターのビフォーが随時修正されていくからだ。
「背が伸びた様な気はするけど、元々これぐらいあったよね」って感じで。

変化は今この瞬間にもジワジワと起こり続けているが、
自分ではその変化に中々気付けない。
結果を求めて行動する場合、結果が手に入らないとやる気が無くなる。
変化を求めて行動する場合は、変化が起きないとやる気がなくなってしまう訳だ。
強くなりたくて鍛えてたり、上手くなりたくて練習する場合等。
全然上達が見られなかったとしても、確実に変化は起きている。
むしろ現状を維持する方が困難で、それは人間業では無い。
何もせずほっといたら、下に向かって変化し続ける。

物事を継続するのに一番必要な力は、忍耐力だの精神力ではなく、変化に気付く力だと思っている。
自分のごく僅かな変化にすら気付ける観察力と、以前の自分と比較できるだけの記憶力。
この変化に気付く力さえあれば、継続はもっと楽しくて楽な作業になる。
ならどうやったらその観察力と記憶力が身に付くんだって話だが、俺もそれは良く解らん。
特に記憶力にあたっては、人並みの記憶力すらあるかどうかも怪しい。
人の名前と顔を覚えるのがメチャ苦手です。
小説でも、やたら登場人物が多いとそれだけで意味不明になって読めなくなってしまう。
冒頭に登場人物一覧を載せている小説でないと読めない。

無いなら無いで、工夫するのみです。
外部のツールを使うだけで解決できるなら使ったほうがいいだろう。
蛇口を捻れば水が出るのに、努力して井戸を掘る人間はいない。

変化に気付く能力が無いと自覚しているのであれば、
やるべき事はしっかりと記録をとっておく事です。
自分のやっている事を、何でもいいから形にして残しておく事。
大事なのは、とにかく形にしておく事。頭の中だけにしまっておかない。
頭の中だけ完結していいのは、記憶力がバツグンの人間だけだ。
自分が辿ってきた足跡を、とにかく目に見える形にして残しておく。
「俺はこんなに沢山考えたんだ」って自己満足に浸るのが一番ダメ。
考えたんだったら、殴り書きのメモでもツイッターでもいいから形にして残しておく。
残したんだったら、後は忘れてもいいです。むしろ忘れた方が効果が高いかもしれない。
その方が、短時間で劇的ビフォーアフターがおきやすいかも。

中々結果がでなくて、もう止めようかな、と思った時。
やるべきなのは、今までの記録を眺め返してみる事です。
主観的な記憶ではなく、客観的な記録を眺めてみる。
そこには「忘れていた」努力の後がしっかりと残っている。
凄い僅かかもしれんが、変化している事にも気付けるはずだ。
運動を始めた当初は、10分程度でガス欠になっていたのが、
今では10分程度では準備運動にもならない程成長していたとか。
成長した状態がごく当たり前の日常になっていると、
初心の頃をすっかり「忘れて」しまいますからね。
だからこそ記録をしっかり残して、ビフォーアフターを確認しておく。

以前にも書いたが、俺は中学生時代はサッカー部だった。
中学生の時、自分はサッカーが上手いと思えた瞬間は一度も無い。
常に自分より上手い人間に囲まれ続けてきたし、
後輩の一年生の方が上手かったりする。
俺の主観的な思い込みでは、3年間で全然成長していなかった事になっている。
やってもやらなくても同じ。な~~んの変化も無い。

しかし高校生の時に体育のサッカーで、リフティングのテストがあった。
合格点は、10回のリフティングをやる事。
これを聞いた俺は「えええええ~~~!?」だよ。
クラスメートの殆どが出来ていないのを見て、益々「ええええええ!?」。

そこはあまりにも俺の「常識」と違いすぎた。
リフティングを回数で数えるようなショボイテストでいいの!?
俺が所属していたサッカー部では、回数ではなく時間で測ってたぞ。
リフティングなんて、出来る様になれば後は集中力の問題だから、1時間でも2時間でも。
俺はベストコンディションで30分しかできなかったから、かなり下手な部類に入ってた。
上手い人は、インステップだけではなく、インサイドもアウトサイドも使うし、
ヒールやつま先、ヘッドや肩に至るまで。そういう中学校だ。
そんな環境でやっていたので、自分が上手いと思った事は一度として無い。
いや、上手いと思った瞬間はあるかもしれないが、すっかり「忘れて」いるので覚えていない。

高校で「普通の人」と比較して、初めて自分が上手いという事を知った。
この程度で充分上手い部類に入るんだぁ、と。
自分も始めたばかりの頃は、あんな感じだったんだなと、
その瞬間になるまですっかり初心を忘れていた。
周囲の人間と比較するのではなく、入部当時の自分と比較していれば、
もっと自信に溢れた振る舞いが出来ていただろうに。
自分はやるだけの事はやってきたんだ、と。

ここ最近の俺は、自分のブログを眺めて変化を確認している。
自分の文章力は確かに上がり続けている。
筋力と違って、文章力なんてのはどうやったら数値化して測れるのか解らんが、
それでも着実に変化して成長してきている。
昔の自分の書いた記事を見ると、恥ずかしくて消したい部分がドンドン出てくる。
もし昔の記事を、同じタイトル・同じテーマで書いたとしたら全然別物になるだろう。
もっとシンプルかつ丁寧に、もっと深い理解で、もっと解りやすく面白く書き直してみせます。
今は書き直すより新しいことを書きたいのでガンガン新しいのを書きますがね。
昔の自分と今の自分では、最早別の生き物となっている。
しっかり残してきた足跡が、その変化をしっかりと残している。

7月上旬の進化とヒーローについての記事は、
今読み返してみても「いやぁ、俺って中々いい事書くなぁ」と自惚れていやがる。
どうも大した変化はまだ起きていないようだ。
7月上旬の俺と、今現在の俺とではほぼ同一人物らしい。
「こんなショボイ文章力で記事をアップしてたなんて恥ずかしい!」
と思える様に早くなってくれ。
その為にも、こうやってしっかり記録を残し続けていきます。

継続するのに大切なのは、観察力と記憶力をベースにした変化に気付く力。
それを助ける外部ツールとして、しっかり記録を残しましょう。
記憶は曖昧で都合よく書き換え可能ですが、
記録はずっと変わらないしいつまでも残る。
何かをやろうとする時、記録を残さないでやり続けるのは、
しおりを使わず本を読むのと同義です。

そして記録を残しておく事のもう一つの利点は、充実感に満ちる事です。
ちょっとパチンコの台を想像して欲しい。
パチンコ台ってのは、釘が沢山打ってあるから。ボールが中々落ちない。
もしここに釘がなかったら、一瞬でストンと真下まで落ちてしまう。
時間と言うのも、それと同じに考える事ができます。
カレンダーになんの書き込みも無いと、
1年がそれこそあっという間に「ストン」と終わってしまう。
年末になって「あれ、今年は何をやった年だっけ?」となる。
1年どころか、5年10年でさえ一瞬に感じる様になる。
何をやったのかまるで覚えていない。

だからこそ、一日一日にしっかりと釘を打ち込んでいく事。
その釘というのは、過去の「記録」か未来の「目標」の事です。
個人的にはこの目標というのはメチャクチャ苦手です。
自分の未来がどうなっているかなんて、全く解らない。
目標設定とかどれだけ学んでも、上手くいった試しがない。
未来の事はあまり考えていません。
未来に起こることはサッパリ解らないが、過去に起きた事なら鮮明に解る。
なので、今の自分はしっかりと記録を残す方に注力してます。
そうすれば、パチンコ台の様に長々とボールは跳ね続ける。
しっかり釘を打って、ボールが跳ね続けている状態を「充実感」と呼びます。
充実感に溢れた人生を送りたいのならば、記録か目標が必須です。
充実感というのは、一過性のものではなく、継続した時に満ちる物。
「ストン」と落ちる一年に充実感は発生しません。

それでは、次回の記事までごきげんよう。

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